もつ鍋には欠かせない
「ニラについて」
にら
ネギ科 ネギ属 ニラ種 (英)Garlic chives
にらとは
本種の原種は、中国北部からモンゴル・シベリアに自生する Allium ramosum で、3,000年前以上前に栽培化されたと考えられます。この種とニラを同一種とみなす場合もあります。株分けまたは種によって増やします。
ニラ(韮)はネギ科ネギ属の野菜で、日本でも「古事記」や「万葉集」にも出てくるほど古くから知られていた。野菜の一つで、地方によって様々な呼び名で親しまれてきました。仏教の世界ではニンニクやラッキョウなどと共に臭いのきつい五葷(ゴクン)の一つとされてきました。この香り成分はニンニクなどに含まれているのと同じ硫黄化合物の一種、アリシン(硫化アリル)です。
ニラは7~9月頃に30~40センチの花茎(かけい)を伸ばし、8月~10月頃、先端に白い花を咲かせます。花は半球形の散形花序で白い小さな花を20~40個もつけます。花弁は3枚だが、苞が3枚あり、花弁が6枚あるように見える。雄蕊(おしべ)は6本、子房は3室になっています。子房は熟すると割れて黒色の小さな種を散布すます。
この花芽も「花ニラ」として食用とされます。全草に独特の匂いがある。このため、禅宗などの精進料理では五葷の一つとして忌避される。にらの強い匂いの原因物質は、ねぎやたまねぎとお暗示硫化アリル(アリシン)などの硫黄化合物です。
ビタミンB1の吸収を高め、肉や魚の生臭みをやわらげる働きもあります。豊富に含まれるカロテンとビタミンE は油と相性が良く、レバーなどとの炒めものに向いています。
にらの歴史
日本でのにら栽培の歴史は古く、9~10世紀ころからといわれています。北海道や東北などの寒い地方では、体が温まり精力がつく野菜として、古くから重宝がられていました。丈夫でつくりやすく、刈り取った後の株から再び新葉が伸びて、年数回の収穫が可能です。
戦前は家庭菜園での栽培が主で、あまり八百屋さんの店頭には並びませんでした。現在では、強いにおいもあまりきらわれなくなって消費が伸びています。
北海道から沖縄まで全国的に栽培されるようになりました。
原産地は定かではありませんが、中国西部から東アジアにかけての地域と考えられていて、モンゴルやインド、ベトナム、日本など広範囲で古くから栽培されてきたといわれています。
日本へは中国から伝来したといわれ、「古事記」には神武天皇の段で「賀美良(かみら)」という名前で登場します。さらに平安時代の「本草和名」という薬物辞典には「韮の和名は古美良(こみら)」と記されています。このみらがなまって、にらとなったという説もあります。
ほかに「万葉集」や「延喜式(えんぎしき)」などの書物にも名前が出てくるなど、古くから親しまれていたことがわかります。
東アジアの各地に自生し、中国や東南アジアでは古代から栽培されています。ところがヨーロッパでは現在でもほとんど栽培されていません。
ニラは長らく薬用として食べられていて、野菜として栽培されるようになったのは明治時代になってからだそうです。
にらの旬
冬から春にかけてのものは葉肉が厚く柔らかです。 出回っているものの大半は、葉幅が広く色も濃い「グリーンベルト」と呼ばれています。夏には暑さに強い細葉種も出回り、一年中手に入ります。主な産地は栃木、高知などで、全国の出荷量の約6割をこの両県で占めています。
「テンダーポール」という花にら用の品種は、5月から10月にかけて次々に花のつく茎を伸ばします。つぼみと茎を食用とします。ニラ(韮)は通年出回っていて旬が無いようにも感じますが、実は、あります。スタミナ料理などに多用される傾向にあるので、夏が旬のイメージがありますね。確かに、ニラ(韮)は暑さにとても強く、栄養面でも非常に優れているので、真夏でも収穫できる大切な葉野菜なのです。
でも、最も美味しい時期と言うのは少しそれより早い時期、春に初めに伸びてきた葉です。春の出始めの葉は柔らかく、香りも強くてとても美味しいのです。
にらの種類
■ 青にら
大葉種のグリーンベルトが一年中出回るが、11~4月がいちばん美味しい時期です。一般的なにらは濃い緑色の葉を食べる「葉にら」で長さは30cmくらいです。特有の香りを生かして炒め物や鍋物、餃子の具などに使われています。周年出回っていて、「スーパーグリーンベルト」や「パワフルグリーンベルト」など「グリーンベルト」系の品種が多く栽培されています。
■ 花にら
葉にらの茎が伸びてつぼみがついた状態のもの。つぼみと花茎の部分を食べます。つぼみも花茎もやわらかく、油で炒めるとシャリッとした独特の歯ごたえがあり、天ぷらにしても美味。香りは少なめで、旬は4〜8月頃です。
■ 黄にら
「にらもやし」とも呼ばれます。日光に当てないようにして黄色に育てるのが特徴です。やわらかくてほのかに甘味があり、香りも、淡く上品なにらです。高級な中国料理に使われる黄色いにらは、青にらと品種は同じです。一度、収穫した後の株に、黒いビニールをかけて光をさえぎって育てる軟化栽培で、もやしのようにつくります。
スープや春巻き、餃子など中華料理によく使用されます。栽培に手間がかかるので価格は普通のにらに比べてやや高めで収穫量は多くありません。黄ニラが最も美味しいのは2月頃で、その頃が最も柔らかく美味しいと言われています。ちなみに2月12日は日本記念日協会認定の「黄ニラ記念日(にっこりいいニラ=2月12日)」となっています。
ニラ(韮)はとても強く栽培がしやすい野菜です。春に出てきた葉を根もと近くから刈り取っても、その後からまた次の新しい葉が伸びてきます。そうやって年に3回位は収穫が出来るのです。
しかも、そうやって収穫後も株のまま冬を越し、次の年も収穫できます。株がどんどん大きくなるので株分けして数年収穫が続けられます。
にらの生産
国内生産量は約6万トンで、全生産量の4割超を1位の高知県と2位の栃木県が占めています。次いで茨城県、群馬県、宮崎県、福島県、北海道が続きます。ニラの生育に適した温暖な気候で知られる高知県香南市、また餃子の街である栃木県宇都宮市の周辺などが主な産地として有名です。
にらの栄養
◆ βカロテン
βカロテンは体内でビタミンAに変換され、皮膚や粘膜を正常な状態に保ち、免疫力を高める働きがあります。さらに血行をよくして体を温め、胃腸の働きを助けるので、夏バテしやすい人、カゼをひきやすい人におすすめです。
◆ ビタミンK
ニラに含まれるビタミンK含有量は、野菜類トップクラスです。ビタミンKは、血液を固めるはたらきがあります。ケガなどで出血したときに、血を固めて止血を促します。また、ビタミンKは骨をじょうぶにするサポートをしてくれます。骨粗しょう症などの予防に効果的です。
◆ アリシン
にんにくにも似たニラ(韮)の臭いのもとは硫化アリルの一種アリシンという物質です。これは、ネギ類に共通して含まれる成分に由来しています。
◆ ビタミンE
ビタミンEは血液をサラサラにして毛細血管の血流を良くし、血栓や肌荒れの予防に効果的。さらに強力な抗酸化作用により、細胞膜や血中脂質が活性酸素により酸化されるのを防ぐ働きもあります。
にらの効果
■ 疲労回復や滋養強壮
にらは、たくさんのビタミン類を含んでいます。ビタミンAは、成人男子の1日の必要な量の約90%をまかなえます。ビタミンCもと豊富に含まれており、B1、B2も含んでいます。また、にらはビタミンB1の吸収を高める硫化アリルも多く含んでいるので疲労回復には効果抜群!!この硫化アリルは食欲増進の効果も発揮するため、夏バテにも最適です。
アリシンは現代人が不足しやすい栄養素であるビタミンB1と結合することで、糖質をエネルギーに変えて疲労を除去する「アリチアミン」になります。このアリチアミンには、ビタミンB1の消化吸収を促進させて体内に長くとどまらせる働きがあり、疲労回復効果をさらに持続させることが可能になります。
◆風邪予防に
β-カロテンは免疫力アップにつながります。強い抗酸化作用があり、鼻や喉の粘膜を保護してくれるので、風邪の原因菌やウィルスなどが体の中に入ることを防いでくれます。
◆免疫力を高め、がんの予防に
アリシンには、免疫力を高め、がんの予防にも効果があると言われています。更に、血行促進により、冷え性や動脈効果、血栓の予防にも効果的とされています。
◆スタミナアップ
アリシンを取ることでビタミンB1の吸収率が高くなります。ビタミンB1は熱に弱く簡単に分解されてしまうのですが、アリシンと共に取ることで、熱から守られより多く吸収されるようになるのです。
ニラを食べる事により、ビタミンB1とアリシンの働きにより体内でのエネルギーの消費効率が大幅に向上するのです。つまり、非常に疲れ辛く、また回復も早くなるのです。
また、レバーや豚肉とニラが良く組み合わされて料理される理由もここにあります。これらの肉類には、ビタミンB1が実に豊富に含まれているのです。しかし単品でとってもそのビタミンB1の大半は壊されてしまいます。
それをニラのアリシンで守ることで、肉体の回復力を底上げできるのです。
ちなみに、ニラもレバーも鉄分だって豊富なので貧血対策にもうってつけです。要するに、レバニラや豚キムチとは実は非常に理にかなったメニューになっています。
◆ダイエット促進効果
ダイエットにもニラは良いのです。もちろん、体力がつくことでより激しい運動がしやすくなり、脂肪燃焼運動をしやすくなるからでもあります。代謝が良くなるため、脂肪が溜まり辛い上に燃やしやすい体に近づけるからでもあります。しかしそんな間接的な貢献だけではなく、ニラは直接ダイエットをサポートしてもくれるのです。
その理由は、脳との関係にあります。ニラと、そこに含まれる酵素によって脳が刺激されアドレナリンの分泌量が増えます。アドレナリンが出やすくなると、まず心身ともにエネルギーが充実しやすくなり、ダイエットのための運動がやりやすくなります。さらにアドレナリンの分泌量が増えることで、脂肪の分解と燃焼が進みやすくなる効果もあると、一説では考えられています。つまり、ニラをしっかり食べることで、ダイエットを続けやすくなり、またその質もアップするのです。
◆抗菌・殺菌効果
強い抗菌・殺菌力があり、風邪や気管支炎の原因となる病原菌から体を守る働きを持つアリシンは、歴史的に食中毒を防ぐための薬味として利用されていて、チフス菌やコレラ菌、サルモネラ菌などの感染予防にも効果があります。
特に、アリシンがたっぷりと含まれているニンニクについては、古典文学として広く知られている「源氏物語」にも風邪症状の薬として活用されていたという記述が残されています。
◆血行促進効果
アリシンを加熱すると「アホエン」という物質が生成されるのですが、このアホエンには強力な抗血栓効果やコレステロールの抑制効果があり、動脈硬化を予防して血液をサラサラにしてくれる働きがあります。血液の流れがスムーズにすることは、脳梗塞や心筋梗塞といった疾患の予防に効果的ですので、コレステロール値が気になる方は、アリシンが多く含まれる食品を積極的に摂取しましょう。
◆生活習慣病の予防
ビタミンEには強い抗酸化作用があり、活性酸素を抑え体内の不飽和脂肪酸の酸化を防ぐ働きがあるので、動脈硬化や心筋梗塞などの生活習慣病の予防にも役立ちます。
にらの調理方法
◆調理のポイント
加熱時間が長くなってしまうと、色が悪くなるばかりか、風味も落ちてしまいます。さっと加熱するのが基本です。香り成分が揮発性の物なので加熱すると、香りは弱まります。
茹でる際は歯触りを残す程度に、沸騰させた湯の中で1~2分程度で済ませる方が良いでしょう。炒め物などは火が通りやすいので生のまま投入し、手早く仕上げる事がポイントです。
◆下処理
基本的には、生のまま調理する事が多い野菜です。切る時には、長さを揃えて切るようにしてください。
ニラはあらかじめ切ってしまうと、においがきつくなります。料理番組のように全ての食材を切っておいて、鍋やフライパンにどんどん投入していく人もいるかもしれませんが、これはおすすめしません。ニラは入れる直前に切った方が良いでしょう。
郷土料理
岡山県で、黄ニラが寿司の具としても用いられる。栃木県鹿沼市などでは、蕎麦の具として茹でたニラを添えた、ニラ蕎麦がある。大分市周辺には、ニラを主な具とするニラチャン(ニラちゃんぽん)という麺料理がある。
中華料理
単独や他の野菜や肉と合わせた炒め物、レバーと炒め合わせた物(レバニラ炒め、またはニラレバ炒め)、焼きそば(「韭菜炒麺」)、餃子の具(中国では一般の餃子にはニラを混ぜ入れることは少なく、ニラを使う物は「韭菜餃子」と称して区別される)、ニラ饅頭(点心)、春巻き(黄ニラ)、ニラの卵とじなどがポピュラーな用途です。春節(旧正月)には、黄ニラと豚肉を使った春餅の料理を食べます。北京料理では、羊肉しゃぶしゃぶの薬味のひとつとして、ニラの花の塩漬けが用いられます。
韓国料理
「ヤンニョム」と称する合わせ調味料の薬味としたり、キムチ、チヂミの具などとしてよく利用されます。
おすすめ調理法
油で熱して食べる
特に野菜は熱に弱そうなイメージがありますが、野菜の中でもベータカロテンが豊富な野菜は、油で熱することでその吸収率がぐっと上がります。ただし、油に溶け出すので、油も一緒に食べられる量(油の部分を残さないように)料理しましょう。
にらの選び方
ニラ(韮)を選び際には、葉の色の緑が濃く、艶があるもの、手で束の根もとを持った時で張りがあって 大きく曲がらないものを選びます、しなびてグニャリと先がだれるようなものは避けましょう。鮮度が落ちるに伴い、葉の色も緑が薄くなり、黄みを帯びてきます。
そして、収穫する際に刈り取られた切り口を確認し、またみずみずしく、切り口が新しい物を選びましょう。また、葉は折れるとそこから傷み始めます。折れた葉が無い物を選んでください。
生薬
◆種子は、韮子(きゅうし)という生薬で腰痛、遺精、頻尿に使う。賛育丹などに配合されます。
◆葉は、韮白(きゅうはく)という生薬で強精、強壮作用があります。
にらの保存方法
乾燥に弱く、長期保存が出来ないので、早めに食べるのがよいでしょう。
◆野菜庫で保管する場合
ニラ(韮)は鮮度が落ちてくると香りも弱くなります。なるべく早く食べましょう。野菜庫で保存すると栄養の減少が少なくなります。保存する場合は、葉が折れないように新聞紙で包み、袋に入れて冷蔵庫の野菜室に立てて入れてください。
◆冷凍する場合
食感が弱り、ペタっとしてしまうので炒め物には向かなくなりますが、用途によっては冷凍する事も出来ます。その場合はすぐに使えるように水で洗い、水気をふき取ってから使う長さに切ってしまいます。そうやって切った物を使う量に小分けして平たくラップに包み冷凍します。使う際は解凍するとべたつくので解凍せず、凍ったまま使います。用途は汁物の具材やニラ玉など混ぜて固めるような料理に向きます。
注意点
◆栄養素の減少
ニラ独特の”臭み”によって、口臭の原因になることがあります。煮たり炒めたりすると、臭みは少なくなりますが、長時間の加熱調理により、βカロテン(ビタミンA)が失われます。どのくらい減るのかは、食品や調理の仕方によっても違いますが、ニラを5分~10分ゆでると、20~45%ぐらいβカロテンが減ることもあります。
◆過剰摂取
私達の体内に存在する菌の中には、悪い菌はもちろん、身体によい菌も存在しています。 アリシンの殺菌効果はその両方を排除してしまう強力なものであるため、過剰摂取すると胃腸内の善玉菌類を殺してしまい、胃腸障害を引き起こすなどのマイナス面も懸念されます。 アリシンの健康効果を期待するのであれば、過剰な摂取は控えて適量を心がけましょう。
◆臭い
アリシンを摂取する上で大きなデメリットとなるのがニオイの問題です。 アリシンは、体内に入って分解されると「アリルメチルスルフィド」「メチルメルカプタン」「アリルメルカプタン」などの強烈なにおいの成分に変化し、血液中にもそのまま入り込んで呼気や体臭として発生します。
ニンニクやニラ、タマネギなどを食べたあとの気になるにおい予防として、おすすめの方法をご紹介します。
食前の対策
アリシンはタンパク質と結びつきやすく、タンパク質はアリシンを包み込んでくれます。
においの元になる食品や料理を食べる前には牛乳を飲むと、イヤなにおいに変化することを抑えてくれます。
食事中の対策
食前の対策と同様、タンパク質を多く含む食品を、においの元になる料理と一緒に食べることが有効です。例えばチーズは牛乳同様タンパク質を豊富に含んでいるため、においを軽減させる効果は高いと考えられています。 また、緑茶に含まれるカテキンは、アリシンと結合してにおいを軽減してくれる働きがありますので、食事中に緑茶を飲むことも効果的です。 コーヒーに含まれるタンニンにも強い消臭効果があるため、コーヒーを飲むのもよいでしょう。
食後の対策
ニオイの強いアリシンを含む食品を口にした後は、食後のデザートとしてリンゴを食べることもニオイ予防に役立ちます。リンゴに含まれるポリフェノールがにおいを抑えてくれます。なお、リンゴは皮ごと食べるとより効果的です。 その他の食後のニオイ対策としては、体内でアリシンが変化したアリルメチルスルフィドを分解する作用を持つウーロン茶やマテ茶も有効です。
にらの季語
「にら」は、春の季語、「にらの花」は夏の季語です。
もつ鍋にかかせない、にらのご紹介でした。
ご挨拶
諸説、御座いますので、何卒、ご参考程度でお願い申しあげます。創業者 謹白
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